四面に貼られた白い壁紙をつたって顔を上げると小さく開いた円形のガラス枠から光が差し込むのが見えた。
私と世界とをかろうじて繋げているそれは止まることの無い時の流れを嫌でも感じさせる。



かつて共に過ごした女性がいた。
誰にでも分け隔てなく接するということができる美徳にあの頃の私は救われていた。
肩で揺れる栗毛が今でも目にちらつく。



彼女はもういないというのに。




淡い色の想い出が漆黒とどす黒い血の跡に汚されていく。
口の中に鉄の味が染み渡り、強く噛み締めた唇を解いて息をつく。




今更。




何度悔やもうと夢に見ようと過去は変わらない、変えることなどできない。




自らの戒めという名の逃避に酔いしれて気が遠くなる程の年月が過ぎ去った。




最期の瞬間、彼女は私に呪いをかけた。
あまりに残酷で優しい呪縛。




あの日から私の身体は朽ち果てることなく未だここに在る。



back